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私とあすかはお昼前には目的の村 アリーナに入った。
村に入ると道の両側に出店が並び、活気の良い空気が漂っていた。
私達は店先を眺めながら、品定め や街の人と商人との会話を聞きながら歩く。
そして村の中心部の広場に出た。
そこには一体だけ女神の像が置かれているだけだった。
その周りではたくさんの人が眺めたり、拝んだりしていた。
「葉月、あの像だよ」
「そうみたいだな」
私達はその像に近づいた。
それは特別な素材で作られているわけではない。
ただ石を削り女神の像にしているだけだった。
その像は両手を天に掲げ笑っている。
この像がそんな神秘的な力を持っているとは思えない。
「ん?お前らもこの像の噂を聞いてやってきたのかい?」
「ああ」
「不思議だよな。何でもない像なのに村人が困っていた時に、希望をくれるなんてよ」
「そうだよね。すごいよね」
隣からあすかが私と男の話に割って入ってきた。
「村人が願えば雨が降るなんてさぁ~」
「ちがうぞ!この女神像に願うんじゃなくて、女神が落とした滴(しずく)に願い、その滴が七色に光ると雨が降るんだ」
男は自分の知っている情報を鼻息を荒くして話し続ける。
それに呼応するようにあすかが答える。
「へぇ~そうなんだ~。でも、その滴が近くにないじゃない。一緒に置いておかないと願えないでしょ?」
「確かにな。けど、村人が一人一人願うと大変な事になるだろ?だからよ、正面に見える村長の屋敷に行って願うみたいだぜ?」
「目の前の村長の家に行って?」
「ああ。村人が村長に相談するんだってよ」
「へぇ~、そうなんだ」
そう言ってあすかが私をちらっと見た。
私はそれに答えるように少し笑い、頷いた。
そして私は心の中で彼女に大きな拍手を送る。
情報を探す手間が省けた。
目の前の家は、他の家とは比べてひと際大きく目立っていた。
村の宝があるとすれば、その村の責任者の家に大体は保管しているのが当たり前なんだけれど、たまに違うところにあったりするのも事実だから。
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