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「ああ。村長はいい人だから行ってみるといいよ。話を聞かせてもらえるはずだからよ。俺もその一人だからな。話を聞いて、この村が好きになって旅の途中にはここに寄って女神様を拝む。ご利益があるかもしれねえだろ?商売繁盛のよ。んじゃな!俺は行くわ。店、開けっぱなしだからよ」
「おじさん。ありがとう」
そう言ってあすかは男に手を振る。
私は男の後姿を目で追い、ため息をついた。
「よくしゃべる男だな…」
「でも、助かったじゃん。そこにあるって事が確実って分かったんだし」
「まあな、それじゃ、どっかで着替えるか」
「そうしよ」
私達は店と店の間を通り細い路地に入った。
近くに人目を避けるのにちょうどいい小屋があった。
中に人が居ない事を確認して、お互いに用意していた服に着替える。
「よし。おっけー」
「そうだな」
私とあすかは着ていた服をリュックに詰め込みお互い確認し合った。
お互い茶色を基調にした容姿。
私は茶色の革製の帽子に、白と茶色の縦ジマの服、そして足首近くがキュッとしまったゆったりとしたパンツ。
男に見えるように長い金色の髪は帽子の中で束ねた。
彼女は白のベレー帽をかぶり、茶色のブラウスに白のベスト、すらりとしたタイトなパンツ姿だ。
「葉月…かっこいいかも」
「そ、そうか?あすかは…人形だな」
「やっぱし、そうだよね」
「でも、似合っているな」
「ほんと?」
「ああ」
「よかったぁ~」
あすかの顔がパァっと明るくなった。
街でこの服を買う時に、ペアルックみたいにしたいということだけで最後の最後まで迷ってこれに決めたんだ。
「では、行きましょうかぁ~」
「ああ」
私達は入ってきた細い路地とは別の道から広場に出た。
そして品物を抱え人混みの中、村長の家を目指した。
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