盗み

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「こんにちは、西からやってきた商人です。村長さんにお勧めの商品がありご案内に来ました」 「ああ。そうですか、ありがとうございます。では、応接室でお話を伺いましょう」 「ありがとうございます」 私達は一礼をして屋敷の中に入った。 玄関を入ると正面に階段があった。 壁には歴代の村長の肖像画が飾ってあった。 その階段のわきを通り右手の部屋に案内された。 中に入ると赤い長ソファーがあり、壁にはこの町の写真が額に飾ってあった。 あすかが持ってきた商品を机に並べ説明をし始め、村長は興味深げに商品を眺めている。 私はあすかが説明した商品の補足を所々に付け加え村長の反応を見る。 「この商品、いいですね。ぜひ、玄関の階段の傍に飾りたいものです」 「ありがとうございます」 そう言って村長が手にしたのは、陶器製で全体に花柄の模様を描いた一輪挿しの花瓶だった。 シンプルで玄関のちょっとしたアクセントには持ってこいだった。 「これにしましょう。ちょうど、台が一つあるのでそれを使って飾りましょう」 「でしたら、台の上にこの白のレースがアクセントになっている敷物をお付けしますよ」 「これは、ありがとう」 そう言って彼は花瓶と敷物を手に応接室を一旦後にし、帰ってきたときには手に代金を持っていた。 「ありがとうございます」 「こちらこそ、よい商品をご紹介いただきました。お礼と言ってはなんですが、この村に伝わるちょっとした伝説をお耳に入れましょう」 そういうと村長は応接室にかけてある写真を取り外し、私達の目の前に差し出した。 「この写真をよく見て下さい。真中に女神様の像が写っていますね。その傍の地面には…」 「何か、光っていますね?」 「そうです。村の中でも噂は聞いているとは思うのですが、この光っているものがこの村に伝わる宝石です」 「ああ、聞きましたよ。村の人たちが象徴として大事にしていた女神像が一つだけ落としたという宝石で、雨が全然降らなくて困っていた時にそれに願いを掛けると雨が降るっていう…」 「そうです。そうです。最初は全く信じていなかったんですよ。たまたま降ったのだろうという思いだったので。それが、度重なると…ね」 「そうですよね。一度ならず二度・三度になると…」 村長は意気揚々と話を進め始め、止まらなくなってしまった。
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