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コツコツコツ…
私は、静かにカウンターを離れ、腰にあるナイフを構えながら二階に続く階段の下まで来た。
一階から二階は、一直線の階段。
二階から降りるには一旦また外に出るか、この階段を降りてくるしかない。
耳を澄ます…
コツコツコツ…
だんだんと階段に近づいてくる足音。
もうすぐ降りてくる
ここで待つか…
上に上がるか…
この宿の二階は、屋根を渡ると簡単に侵入できる。
が、それはこの街を知らない人間がする事。
ここに侵入するとどうなるのかみんなは知っているから…
勿論、私も知っている。
階段に近づいてくると言う事は、ここから外に出るのだろう。
なら、ここで待っていたほうが得策だ。
コツコツ…コッ
足音が止まる。
次の瞬間、階上から銃が乱射された。
「チッ!銃持ちか!」
「どけ!」
「やめろ!銃を撃つな!」
「階下に居るんだろ?どかなきゃ、撃つ!」
「とっくに撃ってるだろうが!…やめとけって!後悔することになるよ」
「知るかよ!」
そういうと相手は銃を乱射しながら階段を一気に駆け下りてきた。
左足に痛みが走る。
「いってー!掠った!」
乱射され、避けるタイミングが遅かった。
私は、足を引きづりながら近くの柱の裏に身を隠した。
フロアに降り立つと相手は尚も銃を撃ち続け、外への扉に近づいていく。
「銃を撃つな!」
「なんだよ!出てこれねぇよな!」
「馬鹿か…知らないからな!どうなっても!」
「ふん!知った事かよ。あばよ!」
そう言って勢いよく扉を開け出て行った相手は、再び中に舞い戻って来た。
「な、な、なんだよ」
声が震えて言葉がうまく出てこないらしい。
同然だ。だって…
「俺の宿場によくも、のこのこと二階からやってきたな。しかも、銃をぶっ放すとはな。覚悟はできているんだろうな」
外から、ロイのドスの利いた声が室内に響く。
「葉月!大丈夫か?怪我ないか?」
続いて、ロイの声が私に向けられた。
「大丈夫。ちょっと 掠っただけだ!」
「葉月。出て来い」
「ああ」
そういうと私は、出口に向かって歩き出した。
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