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「分かった!分かったよ。銃を、渡すよ」
「ついでに、身体検査もしてみるか?」
「何でもいいから、下ろしてくれ!」
どんなに叫んでもなかなか自分に向けられた銃が下ろされない事に恐怖を感じている事が伺えた。
それを、ロイは待っていたかのようにフッと笑った。
「よぅし、分かった。みんな、すまねぇ。ありがとよ」
ロイの言葉でその場の誰もが、銃を下ろした。
そして、自分たちの店に帰って行った。
仲間との連携。
いつも彼の強さに憧れる。
人を従わせるのがとても上手い。
人間的に とても出来ている人だから、自然と人が集まるんだと思う。
私も、その一人。
「たっだいま~!…って、あれ?何かあった?」
長い髪をなびかせ、背中にリュックを背負ったあすかが帰って来た。
一瞬にして緊迫した空気が吹っ飛んでしまった。
緊張感のないあすかの声は、時に人を救う。
現に…
「た、助かった」
このキルトという男は救われ、その場にへたり込んだ。
銀色の髪を全て逆立たせ、ちょっと悪戯っぽい吊り目がとても印象に残る。
こいつも同業者…私は問いかけた。
「で?何をしに来たんだ?」
「だから、何も…!」
無言で顔を眺める私に、彼は答えた。
「し、知り合いが居ると言う噂を聞いたから来たんだ。でも、居ないみたいだから別の街に行ってみるよ」
ゆっくりと立ち上がり、その場を立ち去ろうとした彼をロイが引き止めた。
「まぁ。今日はゆっくりして行きな。いろいろと聞きたい事もあるからな。毎日野宿より、たまには宿でもいいんじゃねぇか?」
「そりゃぁ…」
「宿代はいいさ、その変わり宿の修理を手伝ってくれや。お前が開けた穴を埋めなきゃな」
ウインクをしながらキルトという男を促しながら宿場に入っていくロイに私は慌てて叫んだ。
「ロイ!な、なん…」
「葉月は、あすかに手当をしてもらえ」
私は彼の提案に乗る事は出来なかった。
が、彼をそれを制して静かに私を見つめた。
私は仕方なく、彼の言う通りに従った。
「…分かった」
「葉月、怪我したの?」
「大した事無いよ。掠っただけだから」
「でも、ちゃんと手当をしましょう!」
「いいよ。あすかの手当は、痛い」
「…何か、言った?」
グリーンの瞳でジロリと睨まれてしまっては、言葉を失ってしまう。
「…い、いえ。頼むよ」
「よろしい」
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