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【不明な場所】
全てが白を基調とする大地。
空の色は血を思わせるように深紅に染まっている。
所々には枯木が生えている位で、果てしなく無機質な空間の中に、死んだように倒れ臥している人影は女の姿であった。
「ううッ・・・」
倒れ臥していた人影はぴくりと身体を動かした。
背中に二つの翼にも見える、白に塗られた物体を背負う人影は、やがて気を取り直すとゆっくりと立ち上がり辺りを見回した。
「ここは・・・?
テクノブレナン本社じゃ無い・・・
この異様な空間は一体」
かっては長かった髪は肩位の長さになり、腰の装甲部のホルスターからソーコムピストルをベースに改良された、ハンドガン・TAGCUSTOM《タグカスタム》抜き両手に握り、辺りを警戒しながら歩くのは、かってルサリィと呼ばれていた黒崎麻理亜である。
「ネスト《巣》へ・・・こちらルサリィ応答せよ」
新型のイヤホンマイク式の通信装置もジャミングされたかの様に、全く通じる事は無かった。
「通信も駄目か・・・
まさか・・・これがディメンション・ブラスター・システムDBS《次元破壊装置》の効果だって事なの?」
麻理亜は意識を失う直前の記憶を辿り始めた。
軍事産業である、テクノブレナン本社で研究されている、DBSの破壊が任務であった。
このDBSの開発者である、ハル・バックタンに無事接触したが、ハルが麻理亜にDBSを破壊される前に、DBSを作動させようとする事に気付いた麻理亜は止むなくハルを射殺したものの、今こうして異界の様な場所を歩いているという事は、DBSの効果であるのは間違い無かった。
攻撃対象・・・しかも人間だけを別次元へと送り込み、元居た次元から消滅させる。
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