7章・運命の日、真実の時

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「そうね、ロマンティックな方向で考えるなら駆け落ちとか?」 ここでまだ冗談を言ってのけるか。相棒の場合、ある意味平常運転とも言えるが。 「ふざけないで下さい、真剣に心配してるんですから。それに駆け落ちなら私が気づかないわけないし、そもそもする相手がいないし」 半ば本気で怒りつつ、後付けの理由はやたらときっちり並べ立てるナナである。 じゃあ、と再び切り出す相棒の口調が、いくばくか真剣になる。 「彼女は恐らく、院長先生達について行ってしまったんだと思うわ」 ……。 「えっ……あ、確かに」 ナナがはっとしたように頷くが、 「いや、それは俺も考えたよ」 俺もやはり、失踪の可能性が出てきた時には真っ先にそれを考えた。 しかし、 「朝に見送った時には来てなかったし、もし追いかけてったとしても、今頃とっくに院長先生に連れ戻されてるはずだ」 山道で、しかも人に気づかれないように尾行するなど無茶だ。少々無鉄砲とはいえど、それくらいの分別はあるはずだ。 相棒の目がすうっと細まる。 「ええ、そりゃ後からついて行くとすればね。でも逆に、院長先生達が出発する前から、既に追っていたとすればどうかしら」 ……は?
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