7章・運命の日、真実の時

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「おぉ……」 組み上げた望遠鏡のあまりの格好良さに、思わず感動の声が漏れた。 すらりと黒光りする脚立の上に、鈍い銀色に輝く、金属製の筒が取り付けられている。目元側には沢山の調整用のネジがついていて、その反対側には膨らんだ円形のガラスがはめ込まれている。なにかの芸術品のような美しさがあった。 「すごいね……どうやって作ったの、これ」 シスカはまん丸に見開いていた。ガイは待ってましたとばかりに、得意げに説明を始めた。 「この前の買い出しで街に行った時に、色々とまわって材料揃えてさ。ガラスとか金属筒とか、まあガラクタに近いものしか集まらなかったんだけどさ。それを持って帰ってきて、魔法やら万力やらでちょっとずつ形を調整して作ったんだぜ」 「え、そんな……ええっと、4ヶ月もまえから?」 「そうさ。いやぁ大変だったぜ、筒の形を変えたり、ネジで調節装置つくったり。まあ一番大変だったのはレンズだな。魔法で徹底的に透明に近づけて、その後レンズになるように形を整えてさ。ちょっとでもずれたらオワリだから、相当に神経つかったな、あれは」 ガイは目を輝かせて、次々と勢いよく語る。シスカと僕はただただこくこくと頷いていた。 「ねぇ、せっかく組み上げたんだから覗いてみようよ」 見れば、ネリアは早くものぞき穴に目を当て、望遠鏡を覗き込んでいた。 「あっれー、暗くて見えないよ?」 「あー、俺より先に使いやがって!ちょいかせ、そりゃブラインドが閉まったまんまだからで」 すぐさまガイがひったくり、ごちゃごちゃとネジをいじくり出した。ネリアは詰まらなそうに口を尖らせる。 「早くしてよ、私だって見たいの」 「だからちょい待てって。えーっとこうして回してって……おぉ」 すげえ、と1人感極まるガイに、ネリアが隣から覗きこもうとやっきになっていた。 「ちょっと、勝手に1人で感動しないでよね」 「わーったわーった、すぐに代わるって……すげー」 いつまでたってもどこうとしないガイをネリアが強引に押しのけ、ひと騒ぎした後、順番で見よう、ということになった。
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