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早朝、孤児院の正門前。
色めく木々の落した葉が、風に乗って何処かへと舞って行く。それに付いた朝露が朝焼けの光を捉えて黄金色に輝き、空中を黄金の川が流れるような、どこか幻想的な風景を作り出していた。
「では、いってくるよ」
院長先生は片手で杖を掲げてそう告げた。まるで、どこか散歩に出かけるかのような、何の気負いも感じさせない言葉だった。
その隣で、オーグ先生がどこか据わったような顔つきで頷く。
「……健闘を。僕たちも、留守番ながら応援していますから」
ケインがそんな先生方を真っ直ぐに見つめてそう言った。
「任せとけ。お前と、お前の妹の分まで、きっちり言いのけてきてやるよ。だから留守は頼んだ」
オーグ先生は二カッと笑って答える。
「はい。でも、寮母さんがいるし、グランスさん達もいるから、きっと大丈夫ですよ」
「……そうだな。お2方、こいつらのフォローをお願いします」
普段の大雑把な彼らしくなく、かしこまった様子でこちらに頭を下げるオーグは見ていてちょっと可笑しい。シスカも軽く笑っていた。
「ああ、しっかりやっておく。吊るし上げられないようにして下さいよ」
「はっ、若いのに心配されんでも大丈夫だ。俺だってこれが始めてじゃねえからな」
そりゃ胸張って言う事じゃないですよ、と突っ込むと、彼は豪放に笑った。
「そういえば、リリィを見ませんね。もうそろそろ出発しなければならないのですが……」
腕に付けた精巧な細工の時計を気にしつつ、院長はあたりを見回した。
あ、とケインが何かを思い出したように声を発した。
「あいつ昨日、見送りに行ったら行きたい未練が出るからいかないとかなんとか、言ってましたよ」
「なんだそりゃ。……いや、あいつの性格からしたらそれが賢明かもなあ」
ああ見えて向こう見ずだし、と付け加えるオーグ先生に、
「真っ直ぐなんですよ、彼女は」
院長が薄く笑いながらそういった。
「では、私達はこれで出発します。必ずや朗報を持ち帰りますから、留守番の方を重ねてお願いします」
深々と一礼すると、あっさりと背を向けて歩いて行ってしまった。オーグ先生もすぐにそのあとを追う。
2人の背中を、俺達は見えなくなるまでずっと見送っていた。
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