7章・運命の日、真実の時

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「どういうことだ、意味がわからん」 「彼女は諦めきれなかったんだと思うわ。 でも、先生は頑として受け入れないことは目に見えている。だから彼女は、誰にも邪魔されないように、院長先生達よりも先に孤児院を出て先回りをした」 「先回り……?」 まてよ、俺にもわかりかけてきた。 シスカがナナに向き直る。 「朝起きた時にはもうリリィは居なかったのよね?」 「あ、はい、そうです。昨日寝た時はいたんですけど」 「そう。ということは、リリィが寝静まってから部屋を抜け出したのね。私、倉庫を調べてたんだけど、ランプが一つなくなってたわ」 ……なるほど。それだとリリィは相当な無茶をやったことになるが、辻褄は合う。 「え、どういう、ことですか?」 飲み込めていない様子のナナに、シスカが噛み砕いて説明する。 「そのまま追いかけて行っても、追い返されてしまうだけ。だから彼女は、夜のうちに孤児院を出て、先生に会っても追い返されないくらい先まで行って、彼らを待ち伏せしてたのよ」 ナナの目が驚きに見開かれる。 「え、それって……そんな、無茶苦茶」 ナナの言うとおり。こんなの、普通なら考えつかない。 「でも、これってその……まだ、推測でしかないですよね」 これもその通り。……相棒はそこまで考えているのだろうか。 「今はね。でも、証拠ならそろそろ『届く』と思うわ」
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