7章・運命の日、真実の時

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届く、だと? 相棒の意図するところを飲み込もうと、 「あの、みなさん、」 いやに遠慮がちな声に振り向くと、案の定ケインだった。 「途中からですが、話は聞かせてもらったんですけど。えー、その、」 らしくなく、言葉に迷うように目線をうろうろとさせている。やがて諦めたかのようにため息をつくと、申し訳なさそうに頭を下げた。 「すいません、俺、これ最初から知ってました。リリィは先生達を追いかけて行きました。リーセさんの推測通りです」 「え、知ってたって……どういうこと?」 ナナはわけがわからないといった様子で、露骨に怪訝な表情を出す。 「昨日の夜、あいつから話があるって呼び出されて。そこで、自分はやっぱりどうしても行きたくて、そのためには俺の協力が必要だって、一方的にまくし立てられて」 ……なるほど。いかにもリリィらしいといえばらしい。 「それで、その協力っていうのは?」 先を促すシスカは、既に答えを予想している顔だった。 「そんな大袈裟なものじゃないんですけど。昼頃……というか、ある程度時間が経ったら、この手紙を皆に見せるように、と」 そう言って差し出されたのは、手のひらより少し大きいくらいのサイズのわら半紙だった。 小さく、丸っこい字体でつらつらと言葉が並べられている。 どうしても自分の気持ちを抑えられなかったということ。 自分のわがままのせいで、孤児院の留守番をみんなに押し付けてしまったことに謝りたいということ。 先生方を追いかけるための計画のこと。 心配をかけさせてしまっていることには本当に申し訳なく思っていること。 そして、正午になったらこの手紙を通して無事の連絡を入れること。 ……なるほど。 安否を伝えるために置き手紙をケインに託し、しかし公開するの段階が早いと連れ戻されてしまうかもしれないから、昼頃になって、簡単には戻ってこれないとこまで行ってから、みんなに見せて安心してもらう、と。 彼女なりに考えた末の行動だったのだろう。 ……しかし、引っかかる。 この丸い文字、どこかで見たような気がするのだが。
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