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ふと、時計を見やる。
ちょうど正午になるところだった。
「……正午だ」
呟いて手紙を見やるが、特に何も変わらない様子である。手紙を通じてとおうのは、直接的な意味ではない、のか?覗き込むみんなも首を傾げている。
突然、手紙が淡く光り出した。
文章の最後に続き、白く発光する魔方陣が浮かび上がってゆく。
「マジックビジョン……」
魔方陣を読んで理解したらしい相棒が呟く。確か、その場に術者側の映像を投写する術だ。軍隊などでも連絡用として使われている。
魔方陣がより強く発光する。わら半紙が自らの意思を持つかのようにケインの手からふわりと浮き、そのまま空中に静止する。
フォン……という不思議な音が響くと同時に、紙の上に円形の光の像が生み出された。
リリィの顔がアップで映し出される。
「……あ、つながった。あー、もしもし」
……あいつの声だ。そう認知して、胸をほっとなでおろしている自分に気づく。
ナナが目を見開き、食らいつくように像に見入る。
「もしもし、じゃないわよ!みんながどれだけ心配したか……!」
リリィの顔が少し遠ざかる。
ナナの言葉から一瞬遅れて、申し訳なさそうな表情になる。
どうやら少しタイムラグがあるようだ。
「ごめんね、ミーシャ。何も言わずに行っちゃって。みんなにも、ごめんなさい。私の身勝手な行動で迷惑をかけてしまいました。本当に、ごめんなさい」
リリィの声はいつものそれとは違い、なにか覚悟を決めたような――重みのある声だった。
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