7章・運命の日、真実の時

24/39
前へ
/356ページ
次へ
「そう、なんだ。……いや、子供の扱いとか家事とかもさらっとこなすし、孤児院の、なんていうか、空気にも抵抗ないみたいだったし。普通の人じゃまず無理なことだ。だから、もしかしたらって俺も思ってた」 「え、そう、……かな。ドジ踏んでばっかりだけど」 照れたようにナナの声がすぼむ。 「そんなことはない。俺は凄くしっかりしてると思うし、みんな、内ではあんたのことを凄く評価してる。だからすぐに馴染めたんじゃないか」 ナナの吐息と沈黙。照れきって俯いてしまったあいつの姿が目に浮かぶ。 「……ごめん、ちょっと暑苦しかった。……あんた、なんていうか、」 似てる。うちの妹に。 ナナの小さく息を飲む音。 聞いてるだけの俺も一瞬、ひやりとしたものが背筋を伝う。 「え、と……そう、ですか?」 「ああ。言葉だとうまく言えないけど、雰囲気みたいなものが。だから、つい、ね。ごめん」 「や、そんな……」 ナナはしどろもどろになっている。 「……仲、いいんですね。妹さんと」 「あー……うん、そうだね。あいつもよくひっついてくるし、なんだかんだで、俺の方もあいつに依存してるのかもしれない。この年だし、そろそろお互いに自立しなきゃいけないのに」 「そんなことないと思う。兄妹仲が良いのって、素敵なことよ。……あのね」 少し、間が空く。 ナナが言葉を探しているのだろう。 「わ……ううん、あなたの妹は、とてもケインのことが好きで、一緒にいられる時間を大事にしてると思う。甘えてしまっている自覚もあって、それでも甘えさせてくれるケインに感謝してると思う。……だから、」 俺の手首がくいと引っ張られる。 隣で同じく身をかがめて話に聞き入っていたシスカが手首を握り、目で何かを合図していた。 わかりかねているうちに、シスカはすうっと立ち上がり、手首を掴まれたままの俺も結果的に立つことになった。 「退散するわよ」 俺が聞こえるギリギリの声でそう囁くと、そのまますたすたと歩いて行ってしまった。 ……これ以上聞くのは悪いということだろうか。一応の解釈を出し、俺も慌ててその後を追った。
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

274人が本棚に入れています
本棚に追加