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「俺今日は帰ってくるの遅くなるからな。バイトだし。ご飯と水はたっぷり入れてあるから心配するな」
指差されたほうを見やると、確かに山盛りのキャットフードが皿に用意してあった。
『あれおいしくないから嫌い』
「よしよし。寂しいんだろ。いい子で待ってろよ。行ってくるな」
彼はぐりぐりとあたしの頭をなでて、足早に部屋から出て行った。そうじゃないのに。
残されたあたしは仕方なくキャットフードのほうへ歩み寄る。鼻先を近づけるといかにも安っぽい餌の臭い。
たまには魚とか食べさせてくれてもいいのに。
一口二口食べてから、たらふく水を飲んで窓際へ向かう。この部屋で一番日当たりのいい場所に、彼が買ってくれたふかふかのクッションが設置されたあたしの特等席。
昨日は話が盛り上がりすぎてあまりよく寝ていない。体をクッションに預ければ、とたんに睡魔が襲ってきて、あたしは眠気に抵抗することなく意識を手放した。
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