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「やっと見てくれた!」
女の子は興奮したように、俺の手を両手で握って俺の顔をまじまじと見た。
止めてくれ、俺は異性に触れたこともない超奥手野郎だ。
近い!
それしか言いようのない距離に女の子はいる。
「あの・・あなたはどなた様でしょうか?」
「私?私はねえ〓科学者なんだよ!」
自信たっぷりに胸を張って女の子は鼻を鳴らす。
「そう言う事ではなくてですね?」
「ならどういうこと?」
「あなたは、私に何のようなんですか?」
用が無ければ、見知らぬ人間が見知らぬ人間に声をかける事なんか起きない。
「用・・・確かにあなたに用はあるけど・・」
女の子は言いにくそうに、周囲を見回すと俺から一歩後ろに下がった。
「私の名前は、幸中 魔来!以後よろしく〓」
そういって幸中は俺が今来た道を全速力で走っていってしまった。
速い・・陸上部にでも入っているのかというほどのスピードだ。
元陸上部の俺が言うのだから間違いない。
それにしても、幸中 魔来・・・か。
一体、何をしに来たんだろう。
用があると言っていたから、ここでは話せないような内容なんだろうか。
いや、今は父のジュースを買うのが先か・・
俺は、田舎道を歩き出した。
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