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俺───覇武 隆司(はたけ りゅうじ)は、つまりそういった事情があること以外は普通の高校生だ。 ……いや、この身辺の状況からして既に普通ではないのかもしれない。 まず、このバカみたいに広い家から学校の聖鏡学園まで歩いてガチで一時間かかる。 だから、授業開始の九時になるまでに学校に着くには家を一時間前には出なくてはいけないのだ。 時間がないので走ることにする。いや、走るしかない。ウチの学校は私立なので厳しく、寝坊したというベタな言い訳はまったく通用しない。 家を出て右に曲がると、見晴らしのいい坂の上に出る。ここから町を一望できるのが、家の特権でもあった。 小高い丘に建てられ、周りに他の家はないため立地条件はかなりいい。その上見晴らしもよく、町全体を一望できるなんて、ホントそれだけは自慢できる。 時間はないので、坂道を転ばないように走る。 制服の前を閉めながらだったので、両手が塞がっててとても危なかった。 加えて、食パンを口に咥えているから息もしづらい。 食パン一枚とは情けない朝食だが、文句も言っていられない。何せ遅刻しそうなのは自分自身の責任なのだ。 食パンは口から離して手に持ち、キリのいい所まで行ってから食べることにした。
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