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「さぁて。何だろうな?」
多分に嘲りの混じった声を上げ、ヒズミは髪を掻き上げる。
ベットリと、白い髪が血で染まる。
その狂気に本物の“魔”さえ見え隠れする。
「くそ……動けねぇ……!」
「そりゃあそうさ。そうしてんだから」
ヒズミはもう完全に興味を失ったように背中を向け、地上へ出れるという通路へ歩き始めた。
「待て。どこに……行く気だ……!?」
「決まってんだろ。風呂だ風呂。んな有り様じゃあ寝られやしねぇしな。ギャハハ!」
通路の前で立ち止まり、壁に手を当てて振り返る。
「まぁ、存外楽しませてもらったよ。いい暇潰しにはなった。ワンを破ったのは称賛だぜ」
「この……!」
馬鹿にしていると、直感で分かった。称賛など微塵もしちゃいない。
「だが、そこまでだ。それ以上はねぇ。だから、もう死ね」
背筋が凍る。
凄まじいほどの嫌悪感に吐き気がする。
でも、体はやはり動かない。
ヒズミは、最後に囁くように言った。
「崩壊しろ」
命令。
それに従い、壁が剥離し、天井が落ちてきた。
「っ!?」
逃げ場どころか、逃げることすらできない。
崩壊していく中で、成す術もなく瓦礫に飲み込まれる。
その中で、ヒズミの爆笑だけがやけにはっきりと聞こえていた。
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