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夢を見た。
夢の中でオレは一人の女で、目の前にいる男を愛していた。
その男はあまりに異端で、強くて、そして嫌われていた。
それは彼が英雄と呼ばれるようになってからも続いた。
しかし彼は誰も恨まなかった。
恨む心が欠落してしまっていたのだから。
それが余計に人々に恐怖を与えた。
やがて彼は、精神に異常を来すようになった。
向けられた憎悪や恐怖は、彼を確実に蝕んでいた。
彼は純粋だ。
故に、耐えられなかった。
反してオレは利己的だった。
彼が発狂するようになり、オレは見ていられなくなった。
だからオレは、彼に残った心を破壊したのだ。
彼は心を失い、人間らしさが微塵もなくなってしまった。
無理もない。
心がないというのはそういうことなのだから。
それなのに、何も感じないのに、周囲は彼を嫌悪し続けた。
だからある日、石を投げつけてきた子供を殺した。
次の日、殺した子供の父親が復讐心に駆られ、彼に襲い掛かった。
それを全く躊躇わずに殺した。
次の日、彼を捕まえに来た師団を壊滅させた。
オレはそれを止められなかった。
彼はやがて姿を消し、自分の存在を全て消してしまった。
その日から現在に至るまで、オレが彼を守れなかったことを後悔しなかった日はなかった。オレが彼の心を殺してしまったのだから。
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