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部屋の中心にまで戻ると、そしてゆっくりと振り向いた。
「もういいだろ。早くも飽きてきたしさ。どうあったってテメェらじゃあ──例え万全だろうが──オレには勝てねぇ。違うか?」
「……」
万全ではないオレたち三人と、手加減の上にさらに加減したようなヒズミ。
それでもこうもオレたちは圧倒されてしまっている。
万全の状態でないことは、どうあっても見苦しい言い訳にしかならない。
「尻尾巻いて逃げ出すんなら見逃してやる。特別にクソ天使もな。そして精々残り短い余生を楽しみな」
オレたちを順に眺め、見下すように続ける。
「だが、まだ向かってくるんならもう容赦はしねぇ。ハンデもなしだ。跡形もなく消してやる」
そう言い、右手を上げた。
その上に真っ黒な渦を作り出し、オレを見て凶悪に唇を吊り上げる。
──あれは、いつかオレを飲み込んだ闇そのもの。
全身が咀嚼されていく感触が甦り、背筋が凍りつく。
「……!」
「話が違う? 固いこと言うなよ。知ってんだぜ? テメェらは騙して欺いて裏切る薄汚い生物だってな」
新たに揺り椅子を作り出し、ドッカリと腰を下ろした。
背凭れに体を沈み込ませ、椅子が揺れる。
──音もなく。
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