第十一章─白い部屋─

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「意見が割れても構わねぇ。逃げたい奴は逃げればいいし、死にたい奴は死ねばいい。三位一体なんてことは言わねぇさ」 右手の上の渦を弄びながらヒズミが言う。 要さんもアインツも何も言葉を発しない。 ──そう言えば、ゼロとかって名前のあの渦だけは天使の歌で防ぐことができたよな? 唐突にそんなことを思い出し、顔に出さないように気をつけて大急ぎで頭をフル回転させた。 出会い頭にいきなり顔を鷲掴みにされて、ヤバいと思って天使の歌を使い、そして弾けた。 今思うと、それは妙だ。 しかし、それを利用すればあるいは── 「……答えがねぇな。あと一分で答えなけりゃ、問答無用で消してやる」 ──ダメだ。 あれは何かのイレギュラーだった可能性が大きい。 天使の歌で神の産声に対抗できたのは、あれが最初で最後だったではないか。 勝機とは言えないし、それを実行するには正気じゃ無理。というか狂気の沙汰だろう。 こんな場面で、オレにできることは何だ? 逃げることか? それとも薄い可能性にかけて蛮勇を振り絞ることか?
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