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「──うおおおぉぉぉ!」
オレは喉が焼けるほどの音量で咆哮し、自らを無理に奮い立たせた。
剣を床に刺し、立ち上がる。
走り寄る要さんを手で制し、頷くことで無事を伝えた。
「おいおい。気でも狂ったかい? はっは、んな風体にされちゃあ無理もねぇか。ギャハハハハハ!」
ヒズミが言う。
自分の体を見る気がどうしても沸かなかった。
自分の体だ。見なくともおおよそ想像できる。
「まぁ安心しな。そろそろ楽にしてやるからよおぉ!」
──しかしなぜだろう。何か、清々しいものを感じている。思考が非常に冴え渡っている。
頭から肩へ、肩から肘へ、肘から掌へ、掌から剣へ、そして切っ先から床へ。
ピチョンと、血が滴り落ちた。
それを合図にしたように、ヒズミの剣が再び凄まじい勢いで伸びた。
唸るような風切り音を発し、猛スピードで迫るそれを、オレはかわした。
「……は?」
剣はすぐ後ろにあった壁を、肩を掠めて粉砕した。
爆発に似た音を全身で受け止め、それに押されるようにしてオレは弾けた。
「──!」
息を飲む音は誰のものか。
知らないが、だからと言ってどうということもない。
飛ぶように走りながら剣を握り締め、振りかぶる。
真横を通るヒズミの刃が傾いた。
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