第十一章─白い部屋─

27/38
前へ
/499ページ
次へ
「──うおおおぉぉぉ!」 オレは喉が焼けるほどの音量で咆哮し、自らを無理に奮い立たせた。 剣を床に刺し、立ち上がる。 走り寄る要さんを手で制し、頷くことで無事を伝えた。 「おいおい。気でも狂ったかい? はっは、んな風体にされちゃあ無理もねぇか。ギャハハハハハ!」 ヒズミが言う。 自分の体を見る気がどうしても沸かなかった。 自分の体だ。見なくともおおよそ想像できる。 「まぁ安心しな。そろそろ楽にしてやるからよおぉ!」 ──しかしなぜだろう。何か、清々しいものを感じている。思考が非常に冴え渡っている。 頭から肩へ、肩から肘へ、肘から掌へ、掌から剣へ、そして切っ先から床へ。 ピチョンと、血が滴り落ちた。 それを合図にしたように、ヒズミの剣が再び凄まじい勢いで伸びた。 唸るような風切り音を発し、猛スピードで迫るそれを、オレはかわした。 「……は?」 剣はすぐ後ろにあった壁を、肩を掠めて粉砕した。 爆発に似た音を全身で受け止め、それに押されるようにしてオレは弾けた。 「──!」 息を飲む音は誰のものか。 知らないが、だからと言ってどうということもない。 飛ぶように走りながら剣を握り締め、振りかぶる。 真横を通るヒズミの刃が傾いた。
/499ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6151人が本棚に入れています
本棚に追加