6151人が本棚に入れています
本棚に追加
傾いたまま、薙がれる刃を側転するように跳び越え、かわす。
ヒズミの目が僅かに歪んだのを捉えつつ、さらに走る。
──雑念なんざとっ払え。そんなものは邪魔にしかならない。
話なんざ、組伏せた後にいくらでもしてやればいい。
「ちっ!」
ヒズミの剣がオレを追い越し、元の長さに戻った。
それに遅れ、オレもそれに追い付く。
降り下ろす血染めの剣は赤い線を引き、一直線にヒズミに斬りかかる。
「──!」
しかし一瞬早くヒズミは剣を上げ、血染めの剣を受け止めた。
「っ──あああぁぁ!」
さらに咆哮し、ありったけの力を全て血染めの剣に注ぎ込む。
何かが軋む、鈍い音が小さく響いた。
「は……んなナマクラでこいつを砕こう……ってかあぁ?」
相も変わらぬ余裕の声で嘲笑し、ヒズミはオレを睨んだ。
「笑わせんな!」
ヒズミの白い剣が僅かに輝きを増したかと思うと、急に六つに枝分かれした。
「っ!」
それら全てが生きているように不規則に動き、オレに向かって伸びる。
急いで後方に跳躍し、襲いかかる六つの刃を叩き伏せた。
「……」
枝分かれしただけ力はそうはないらしく、さっきのように吹っ飛ばされるようなことはなかった。
だが、あれでは満足に打ち合うこともできない。
最初のコメントを投稿しよう!