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右手の血染めの剣に目を落とし、自分にだけ聞こえる声で呟く。
「これじゃ足りない」
──もっと、もっと強く。ヒズミの剣を、一撃で粉砕できるくらいに。
「はっは。どうしたよまだ終わりじゃねぇだろうが。おら来いよ、今のは中々いい感じだったぜ、カワゾエタクミ!」
ヒズミの声を、どこか遠くで感じながら、思考を巡らせる。
──この魔力で、どうやればヒズミの力の上を行ける?
合わせる血染めの剣はもう残っていない。天使の歌も期待できない。腕力でどうこうできる問題でもない。
──結局、ヒズミは尚も遊んでいる。倒せるチャンスは今しかない。
何とかして妙案を絞り出さないと──
「悪いが、やはり逆らわせてもらうぞ」
グルグル回る思考の渦に飲まれていたところ、不意にそこから引きずり出された。
「……え?」
「妹は後だ。あれを倒してからでも問題はなかろう」
「アインツ……?」
いつの間にかオレの真横にまで来ていた、それはアインツの声だった。
「どの道、あのクソガキをどうにかしなけりゃとても先へは行かせてくれねぇよ」
反対側には、卑屈っぽくそう言う要さんの姿があった。
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