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「やられっぱなしってのも、ちと気に食わねぇことだしな」
「……はは」
何と返すべきか分からず、オレはただ苦笑するしかなかった。
全身が痛い。
動ける時間は、そう長くはなさそうである。
短いこの残された時間で、ヒズミの力を上回り、動きを封じる。
──途方もないが、やるしかない。
「拓海様、体は」
「大丈夫だ。こんなんただの掠り傷だよ」
掠りというか削りなんだけど、まぁいいや、どっちでも。
「ふむ。ならば教師の方はどうだ?」
「オマケみてぇに聞くんじゃねぇ。んなのケガの内にも入るか」
要さんは鬱陶しそうに手をヒラヒラさせ、応えた。
「訳の分からぬ虚勢をよくはれる。嫌いではないが」
全くもって馬鹿馬鹿しい、とアインツは楽しそうに吐き捨てた。
台詞と態度が不釣り合いすぎる。
ヒズミはもはや何も言葉を放たず、一歩を踏み出した。
オレたちの間からも会話が消え去った。
「……」
言い知れぬどんよりとした気味の悪い緊張感に包まれ、ただただ何かが揃うのを待つ。
もう一歩、ヒズミは踏み出し、緩慢に距離を詰める。
一度ぐっと目を瞑り、そしてすぐに開く。
その時には、もう何かは揃っていた。
──さらに一歩。
その音を合図に、一斉に飛び出した。
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