第十一章─白い部屋─

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オレは右から、要さんは左手から剣を薙ぎ、アインツは真正面から巨大化した爪を降り下ろした。 ヒズミは大いに唇を裂き、大いに笑った。 剣を逆手に持ち変え、翳すように前に出した。 それでオレと要さんの斬撃を受け止めた。 さらに、上を向いている柄頭でアインツの爪を防ぐ。 「っ!」 三つの攻撃をたった一振りの剣で、完膚なきまでに受け止められてしまった。 その事実に僅かに動揺し、それに気が付いた時には吹き飛ばされていた。 「──っの野郎……!」 全身で床を引っ掻いてブレーキをかける。 そのまま獣のように、さらに跳躍した。 「遅ぇ!」 しかし、オレが攻撃を仕掛けるより先にこめかみを爪先で蹴り抜かれた。 「~っ!」 脳が激しく揺れる。 意識が一瞬で何度も跳びかける。 「……寝て──」 一度体がバウンドし、床を殴り付けてその衝撃で起き上がる。 「られっかあああぁ!」 声を、体を──魂をも奮い立たせてやる。 血反吐を吐き、さらにスピードを上げんと足に全霊の力を注ぎ込む。 ──もっと速く。速く。速く。誰にも追いつけないほどに速く。 もっとスピードを上げろ。体が張り裂けたって構うものか。 裂ければ、その時に考えればいい!
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