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残る魔力、体力、全てを肉体強化にのみ回す。
そのまま躊躇わずに床を蹴り抜いた。
全身を巡る風、衝突する大気の壁が、容赦なく全身を切り裂いた。
「っらあああぁぁ!」
両手で握り締めた剣を、すれ違い様に全力でヒズミへと叩きつける。
ガンと、金属音というよりも打撃のような音を響かせ、やはりヒズミは受け止めた。
「は。確かに速度は上がったな」
オレの剣を弾き上げ、オレは大きくバランスを崩された。
両手は上へ、人体の急所が、全て露にされてしまった。
「で、それがどうした?」
「──!」
全くの迷いも見せずに、ヒズミはオレの心臓へと剣を繰り出した。
だが、それが届くか届かないかの刹那、オレは引き摺られるように後退し、何とか串刺しを免れた。
「あ……りがとう……ございます……」
オレの肩を、それぞれ要さんとアインツが掴んでいた。
胸には小さな刺し傷が穿たれ、後一瞬でも二人のフォローが遅ければ、完全に死んでいたことを如実に表している。
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