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「まだ行けるか?」
「……──」
一度深呼吸をし、体内でさらに魔力を練り上げる。
「当たり……前じゃないですか……!」
「よし」
肩から手を離し、要さんはヒズミへと突進した。
アインツもそれに続く。
「……」
──魔力がない。
術なんて到底使えないし、龍の腕も出せやしない。
──そんなことなど知ったことか。
魔力なんて結局、オレ自身が自分で使ったり回復させている代物だ。
──だったら、この場で、無理矢理回復させて、無理矢理引きずり出して無理矢理行使してやる。
それができないなんて誰が決めた!
「まだ……まだだ──こんなんじゃ、全然足りねぇんだよ!」
魔力を駆け巡らせ、強引に魔力をほじくりだしてやる。
ゴミのような量でもいい。
使えさえすれば。
──魔力とは、本来は人体に有害である。
こんな強引な手段を使えば、当然のように体は痛んでいく。
実際の傷もあり、もう立つことすら難しくもある。
だが、着実に魔力は貯まっていく。
「──!」
床を蹴る。
凄まじい追い風に追われ、視界すらも霞む。
傷がとてつもないスピードで増えていき、もう感覚すらあまりない。
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