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それだけでは済まず、床、壁、天井、二つの通路にまで亀裂を走らせる。
舞い上がる土煙を突き破り、アインツはオレの側に着地した。
「無事か、拓海様?」
「お前こそ……それ」
アインツの鳩尾に刺さっている光の刃。
あまりに痛々しくて、見れたものではない。
しかしアインツはそれを抜き放ち、ゴミでも捨てるような気軽さで放り投げた。
「あの磔の後ではこの程度問題にもならん。回復にはまた遠ざかってしまったが」
「……そりゃ、結構」
何とか立ち上がろうと体に力を入れてみるが、しかしどうにもうまくいかない。
それどころか、体がピクリとも動かない。
仕方ないかとため息をつき、立ち上がることは諦める。
「おいしいとこ、お前に見事に持ってかれたよ」
「何を言う。拓海様と教師の力あってのものではないか」
「うわ。似合わねぇ」
「で、やったのか?」
いつの間にか要さんが側に来ており、土煙の巻き起こる中心地を睨みながら言った。
「死んではおらぬだろうよ。拓海様との制約もあるのでな」
人を殺すな、か。
アインツは少なくとも、ヒズミを人とみなしたということか。
何だか複雑な気分だった。
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