第十一章─白い部屋─

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「さぁて。何だろうな?」 多分に嘲りの混じった声を上げ、ヒズミは髪を掻き上げる。 ベットリと、白い髪が血で染まる。 その狂気に本物の“魔”さえ見え隠れする。 「くそ……動けねぇ……!」 「そりゃあそうさ。そうしてんだから」 ヒズミはもう完全に興味を失ったように背中を向け、地上へ出れるという通路へ歩き始めた。 「待て。どこに……行く気だ……!?」 「決まってんだろ。風呂だ風呂。んな有り様じゃあ寝られやしねぇしな。ギャハハ!」 通路の前で立ち止まり、壁に手を当てて振り返る。 「まぁ、存外楽しませてもらったよ。いい暇潰しにはなった。ワンを破ったのは称賛だぜ」 「この……!」 馬鹿にしていると、直感で分かった。称賛など微塵もしちゃいない。 「だが、そこまでだ。それ以上はねぇ。だから、もう死ね」 背筋が凍る。 凄まじいほどの嫌悪感に吐き気がする。 でも、体はやはり動かない。 ヒズミは、最後に囁くように言った。 「崩壊しろ」 命令。 それに従い、壁が剥離し、天井が落ちてきた。 「っ!?」 逃げ場どころか、逃げることすらできない。 崩壊していく中で、成す術もなく瓦礫に飲み込まれる。 その中で、ヒズミの爆笑だけがやけにはっきりと聞こえていた。
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