第十二章─歪みに至るための六つの傷風景─

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「お帰り。何で血塗れ?」 無数の箱が乱雑に置かれ、それらを繋ぐ無数のケーブルが蜘蛛の巣のように張り巡らされている。 箱は、さしずめ捕らわれた虫と言ったところか。 部屋は必要以上に明るく、眩しくすらあるほど。 その中心で、横になっていた白衣姿の蜘蛛、八桐和人は立ち上がりもせずに言った。 「遊びすぎた。で、そっちはもう終わったか?」 「まぁね。ご所望の魔力の毒の排除装置、何とかついさっき組み上げた。でも問題は山積みさ。まず実験ができない。神の産声なんて規格外の魔力に耐えうるか分からない。他にも選り取り見取りだけど、何から聞きたい?」 「何も聞きたかねぇよ。どうにかしろ」 「あっはぁ。無茶を言うなぁ」 参った参った、と頭を掻き、ポケットから棒キャンディを取りだし、口でラップを剥ぐ。 ヒズミはそれを横目で見やり、箱を避けながらその奥の部屋へ向かう。 「あ、そうそう。そういえば、天使の歌は何かやらかしてくれたかい?」 「ああ?」 ヒズミは首だけで八桐を見ると、目を細めた。 「どういう意味だ?」 「君の様子を見る限りじゃ、彼らは一矢報いたようじゃないか。もしかすると、天使の歌の三つ目の能力がついに開花したんじゃないかと思って」
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