第十二章─歪みに至るための六つの傷風景─

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八桐は緩慢な動きで体を起こし、ボサボサの髪をさらにグシャグシャに掻きむしる。 銀縁に収まったガラス玉の向こう側の瞳が、怠惰な興味を示している。 「三つ目だあぁ?」 「そうそう。自動防御、天使の歌の空間の召喚、それに続く三つ目──最後の力。それがスッゴく気になってね。 で、どうだったのよ?」 ヒズミは嫌そうに眉根を潜め、嫌悪を隠そうともせずに八桐に視線を送る。 「知らねぇよ。気になるんなら発掘してきな。生き埋めにはしてやったが、運がよければ生きてるかもしれねぇしよ」 「あっは。性格悪いなぁ。ヒズミさんとの戦闘の後の弱りきった状態で生き埋めになんかされちゃとても脱出できないよ。オマケに酸素だってすぐになくなる。苦労して堀当てても生きちゃいないよ」 「んなもんどうだっていい」 唾でも吐くようにそう言うと、ヒズミは顔を正面に戻した。 八桐は体を伸ばしながら、こともなさげに一人言のように続ける。 「でも惜しいな。これじゃあ僕の仮説が証明されないじゃないか」 ヒズミはもう何も言わず、聞かず奥の部屋へと消えていく。 「そうだね、例えば彼が堕天使と呼ぶ使用法は負の感情を──」
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