第十二章─歪みに至るための六つの傷風景─

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「よう」 ドアを蹴破るように粗暴に開け放ち、小さな個室へとヒズミは押し入った。 中には川添飛鳥がベッドの上に座っており、しばらくその風貌に驚き、ヒズミを見つめていたが、やがてキッときつく睨み付けた。 「来ないでって言ってるだろ。ただでさえあっちの部屋こっちの部屋って動き回されて疲れてるのに」 「テメェのオニーサンをぶち殺してきた」 「──」 飛鳥の非難を無視し、いきなりヒズミは直球をぶち込んだ。 さすがに飛鳥は言葉を失い、目を丸くする。 「──ついでに言うと、パパも死んだぜ?」 「──!」 弾けたようにベッドから立ち上がり、飛鳥はヒズミに掴みかかった。 震える小さな手を、ヒズミは嘲笑を浮かべながら見下ろしている。 「何で……」 「さぁな。気が向いたからってか?」 飛鳥の目に憤怒の炎が灯り、血が着くことも考えずにヒズミの顔を叩いた。 パチンと乾いた音は一瞬で消え、ヒズミの顔は左を向く。 さらに飛鳥はヒズミをあらんかぎりの力で突き飛ばし、その衝撃で数歩後ずさった。 ヒズミはと言うと、なされるがままに派手に背中を壁で打ち、崩れ落ちた。 そして、不気味に乾いた笑みを漏らし、小さく肩を震わせた。
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