第十二章─歪みに至るための六つの傷風景─

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気がつくとひたすらに白い空間に立っていた。 さっきまでいた場所も真っ白だったが、しかしここはそこの比ではない。 既視感バリバリの果てなく続く白色の中に、オレはいた。 「ここは……天使の歌の中か?」 はて、いつの間に入り込んだのだろうか? 随分と久し振りだが、自分から入った覚えはない。 白色以外に何も存在しないこの空間では、ここは自分の中でもあるのに自分が異物に思えてくる。 「……はぁ」 手を伸ばし、膝を曲げ、首を回して体の動作を確認。 傷はこちらには持ち越していないようだ。 さて、どうしてオレはここにいるのだろうか? 前までは里桜さんに呼ばれて出入りしていたが、今はその里桜さんはいない。 だが、間違いなく何もしていない。 現実のオレは、恐らく絶賛瓦礫の下敷き中。 こうして意識があるのだから死んではいないだろうが。 どちらにしろ、ここに入る余裕は無意識だったとしてもなさそうだ。 「どうなってんだ?」 頭を掻き、現状を整理してみようとするがまるでうまくいかない。 とりあえず座ろうとその場に腰を下ろした。
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