第十二章─歪みに至るための六つの傷風景─

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景色は──村だった。 緑が多く、山に囲まれた、田園風景。 木造の古い建物が舗装もされていない道に沿って並んでいる。 手を伸ばして何かに触れようとしてみるが、結局何にも触れることはできずに通り抜けるだけだった。 ──映画みたいなものか。 景色が映し出されただけで、やはりここは天使の歌の中なのだろう。 「だとすればここは……?」 不意に、背後から誰かがオレの体を突き破った。 「おわ!?」 何ともないのだが、さすがに動くものがあるとは思わずに情けない声を上げてしまった。 それは子供だった。 「待──」 次に、また何かが連続的に体を通過した。 それは、石だった。 振り向くと、男女合わせて四人の子供が石を拾っては投げを繰り返している。 もう一度振り向く。 石を投げられ、逃げている少年。 ──あれはヒズミだ。 この景色は、オレが持つ断片的なヒズミの過去を補強しているらしい。
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