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とにかく、オレは少年──ヒズミを追うことにした。
遅れたスタートではあったが、やはり子供の足、すぐに追い付くことができた。
四人の子供たちも追ってきている。
棒切れまで振り回して。
大人たちはそれを見ながらも、誰も通りすぎていく子供たちを止めようとはしない。
むしろ、ヒズミが悪いのだとでも言うように、隠そうともしないで幼いヒズミに嫌悪の視線を浴びせている。
──狂ってる。
穏やかな田園風景。美しい緑に囲まれた山間の村。そこに住む人々は、醜い。
ヒズミはそのまま村を飛び出し、山の中へと入っていく。
オレもそれを追い、やがてボロボロな廃墟のような建物に辿り着いた。
ヒズミはその中に駆け込んだ。後ろには子供たちの姿はもうなかった。
「お邪魔しまーす……」
壁を通り抜けて、その中へと侵入した。
ヒズミはその隅で膝を抱え、その中に顔を埋め、咽び泣いている。
オレの目は、そのすぐ横の女性に釘付けにされた。
ヒズミと同じに黒い髪の美しい女性が、泣いているヒズミの背中を擦っていた。
美しいのに、しかし実際は酷く窶れていて、困り果てたように表情を曇らせている。
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