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それは燃えかすだった。
ヒズミはそれを呆然と眺めていた。
親子が暮らしていた廃墟が周囲の木々をも焦がし、灰になっていた。
野次馬が集まっている。
その声が聞こえる。
「骨が見つからないんだと」
「はぁ。骨まで燃え尽きたのかい。それはそのう……」
「バカ。違うだろ。あの化物を捨てたんだよ」
「どういうこったい?」
「あれと一緒に暮らしてた証拠を全部消して逃げたんだ。あの女に死ぬ度胸はねぇ」
「何でだい?」
「知らねぇのかい。あの女の手首には──」
それ以上はとても聞いていられなかった。
ヒズミはただ呆然と目を見開き、燃え尽きてしまったその家を眺めている。
野次馬がヒズミに心ない言葉を浴びせ、お前のせいだと中傷する。
子供たちが笑いながら投げつける石を一身に受け、ヒズミはピクリとも動かない。
──ヒズミは、唯一信頼していた母親に捨てられたのだ。
悪いのは誰なのだろうか?
少なくとも、オレにはあの女性が悪いとは思えなかった。
限界だったのだろう。
だがヒズミはどう思ったのだろうか?
「パパ──そうだ、パパを探さなきゃ──」
呪文のようにそんな言葉を繰り返す少年は──
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