第十二章─歪みに至るための六つの傷風景─

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ガンと、一際大きな石がヒズミの頭にぶつけられ、ヒズミは前のめりに倒れた。 ポツポツと雨が降り始める。 濡れていく地面に、ジワリとヒズミの血が混じる。 誰も助けようとはしない。 誰も見ようともしない。 雨だ雨だと、帰っていく。 雨は勢いを増し、真っ黒な雲がそらを覆い隠し、どこかで雷鳴が鳴る。 それに共鳴し、急にヒズミの体が大きく輝いた。 「あ──あ──あ──うわああああぁぁぁ!」 光は爆発的に広がっていく。 ヒズミの体が浮かび上がり、光の中心でもがくように雄叫びを上げる。 人々はすぐに振り返り、それを見たが、それが何かを理解するより前に視界が奪われる。 ──光が、闇となる。 底無しの、絶望の闇。 いつかオレを消し去ったあの闇と、まったく同じもの。 にわか雨が本格的に降り始める頃に、闇は消えてしまった。 それに包まれていた木々、人々、村──その全てを巻き沿いにして。 べチャリとヒズミは地面に落ちる。 何もかもが消滅してしまった、孤独な場所に、一人きりで。
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