第十二章─歪みに至るための六つの傷風景─

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戦争の原因はここから始まるようだ。 人界の村が不自然に消滅。人間はそれを魔族の仕業だとした。 しかし魔界側はこれを否定。一瞬であの大規模な、しかも徹底的な破壊は不可能だとした。 そして調査の結果、ヒズミは捕らえられた。 そこで初めて、世に人間と魔族のハーフという存在が明るみに出たのである。 ヒズミは牢に入れられ、鎖でがんじがらめにされていた。 そこでもまた、ヒズミは迫害されていた。 あの破壊の中心地点で発見されたヒズミは、疑われることもなくそれが当然であるように投獄されてしまった。 生き残りであるという可能性すらも考慮されなかったのだ。 ヒズミを捕らえたのは人間で、力を抑えるためという名目で魔界側に引き渡された。 だが魔界側の思惑は違った。 「……」 格子の前に、軍服姿の逞しい男が現れた。 一見すると人間のようだが、しかし頭から肩を這うような太い角が生えている。 ヒズミはゆっくりと顔を上げ、そして嬉しそうに笑うのだった。 「あ、パパ」 その男は、ヒズミの父親だとして連れてこられた人物だった。
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