第十二章─歪みに至るための六つの傷風景─

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「手にしていることに気づいていない……? それってどういう――」 「答えはあなたの手の中に。あなたが本当に大切な物を見失わなければ、自ずと見えてきます。 ある意味では、あなたはとっくに勝利しているのですから」 よく、分からなかった。 しかし何だか頭を内側から殴られたような、奇妙な感触だった。 「さぁ、もう戻らなければ。夢の時間は終わりですよ」 言われてハッとした。 ここにどれだけの間いたのかは知らないが、現実ではオレは絶体絶命のピンチなのであった。 「えっと……」 しどろもどろになるオレに、しかしエーシェは見透かしたように微笑んだ。 「大丈夫ですよ。戻った瞬間に死、なんてことにはなりませんから」 「どうして?」 「すぐに分かることです。信じてください」 そう言われれば、さすがに信じるにやぶさかではない。 とは言え根拠がないことも事実。 つまり、マジで怖い。 「最後に一つだけ」 少しずつ、現実に意識が引っ張られていく。 すぐに言葉もうまく紡げなくなる。 「これは私が招いた事態です。それにあなたを巻き込んでしまった。それを分かって、認めた上で、恥を忍んで、どうかお願いします」 里桜さんの体が光に包まれ、そして弾けとんだ。 そこには、今にも泣き出してしまいそうな顔の、エーシェ本人がいた。 「彼を――止めて上げてください」 その懇願は、酷く遠くの方から聞こえた。
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