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  「ふ、ふーか、そんなに怒らなくても」 「怒ってないし」どうみても怒っていた。まあまあとなだめる彼をよそに、風花はきつく目をつり上げ、ひとりで鼻息を荒くしている。 「そもそも、ぶーちゃん、声が小さいよ」  ああ、まきぞえだ。ぶーちゃんこと三戸信之は、いわれのない批判を受けて、カウンターの椅子の上ですっかり小さくなってしまった。のぶゆきの「ぶ」をとってぶーちゃん。建て前はそうなっているが、真実はちがう。この愛称は以前、彼をいじめていたクラスメイトがつけたもので、でぶでぶさいくだからという暗喩である。もっとも、ぼくたちはただ呼びやすいという理由だけでそう呼んでいた。 「ぶーちゃんは悪くないさ」ぼくはとなりにいる彼の肩をぽんと叩き、励ますように優しく笑いかけた。それだけでぶーちゃんは元気になる。
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