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ふいに、カウンターの向こうからくすくすと快活な笑い声が聞こえてきた。一瞬で誰だかわかった。圧倒的な存在感。マドンナの登場である。
「おかしなこといってる」
なぎさだ。黒いエプロンをしめた彼女は口元をてのひらでおおい、ぼくとぶーちゃんを交互に見比べて、またぷっと吹き出して笑う。
「なぎさ。嘲笑するのはやめたまえ」
「ごめん、ごめん。だって、瞬たんのせいで怒られたのに、本人がフォローしてるんだから」
そうして、またくすくすと笑う。彼女が笑うとそれだけで、ぱっと場が華やぐから不思議だ。枯れ木に咲いた花のように、周囲の人間を自然に笑顔へと導く力を持っている気がする。
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