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   三月一日。ぼくたちはこの日、三年間の高校生活に幕を閉じた。桜の開花はまだまだ先で、凍てつくような寒さが身体の芯まで真っ白にした。在校生に見送られたぼくたちが歩む道は、これからの新生活に向けて希望に満ちあふれている。最後の思い出づくりにこうしてみんなで集まろうと提案したのも、やはり卒業式でわんわん泣いていた風花であった。  それぞれのオーダーが目の前に並べられ、箸をつつきながら思い出話に花を咲かせる。卒業パーティーがはじまって三十分もたたないうちに、友人たちはアルコールが入ったようにハイになっていた。風花はぶーちゃんをつかまえて、なにやら愚痴を唱えているようだ。 「ぶーちゃん、ぶーちゃん。もっと大きな声でしゃべらないと、職場で友だちなんかできないよ」 「そうかな」  ぶーちゃんは迷惑そうな表情を浮かべて、すでに完食目前のお好み焼きに箸を伸ばした。
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