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「父や母も寛大でね。焦らずに、自分のやりたいことをゆっくり探せばいいといってくれたよ」
「でも、いつかは働くんでしょう」
なぎさがぼくの顔色をうかがうように、上目づかいでたずねた。ぼくはくすっと笑い、すすけた天井を見上げてため息混じりにいう。
「そうだね。考えておくよ。マラソン選手。プロボクサー。団体競技は苦手だから、野球やサッカーの選手には向いていないかもしれない。億を超える契約金や年俸は魅力的だがね」
「おー。いうねー」風花があきれて背もたれにのけぞった。なぎさは困ったように眉を下げ、いたずらっ子をみるような目でぼくを眺めている。
「瞬たんが運動神経抜群なのは知ってるよ。でも、あまりにもリアリティーがないなあ」
風花はなにもわかっていない。彼女が知っているつもりでいるぼくの運動神経など、抑制に抑制を重ねたほんの数パーセントのものである。
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