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   ぼくは能力的に可能か不可能かで判断していない。あくまで可能であることを前提として語っているのだ。やるか、やらないか、最後の選択肢はぼくにある。フルマラソンなら世界記録を十分は更新するだろうし、プロボクサーなら対戦相手のパンチを一発ももらうことなく、一分以内にKOする自信だってある。 「夢ばっかりみていると、あかねたんに愛想尽かされちゃうよ」  なぎさもわかっていない。 「わかった、わかった。それよりきみたちは“あかねたん”を卒業したまえ」 「いいじゃない。瞬たんは厳しいなあ」  ベッドの上では「瞬」なのに。ぼくはなぎさの屈託のない笑顔をみながら、そんなことを考えていた。火照る身体、熱い吐息、しなやかに動く指先、すべては過去の思い出でしかない。
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