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  「柏木くん、全然食べてないね」  ぶーちゃんが亀のように首を伸ばし、いまだ半円状態のお好み焼きを凝視している。なにかを期待し、なにかをねだるような目だ。「よかったら食べるかい」ぼくがてのひらを向けると、ぶーちゃんは待ってました、とばかりに力づよくうなずいた。風花が目を丸くする。 「ひゃあ。すごい食欲」  忘れたのなら思い出してほしい。なぎさ特製のハングリーマンは軽く四人前はある。それがどうだ。ハングリーマンでも、彼の底無しの胃袋を満たすことはできない。食事をしているときのぶーちゃんは、ほんとうにしあわせそうだ。 「おなかすいてないの」  通常サイズのお好み焼きを半分以上も残したぼくを、なぎさがさらりと気づかう。ぼくは小さくかぶりを振って、心配ないと笑ってみせた。
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