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  「このあと、約束があるものでね」 「あー。そう。そういうことだったの」  謎が解けた。風花の満面の笑みがそういっている。いまが午後一時を過ぎたところ。もう五時間もすれば、またべつの場所でべつの料理をオーダーするぼくがいる。友人たちと過ごす時間は楽しいけれど、恋人と過ごす時間はその一瞬一瞬さえも、真珠のようにきらめくのだ。 「なんだかあんまり楽しそうじゃないね」  はっとした。なぎさの悲しげな声が鋭いとげとなり、ぼくの心に深く深く突き刺さったようだ。「おかしなことをいうね」ぼくは平静をよそおっていた。無意識のうちに顔をそむける。 「恋人に逢うんだ。楽しくないはずがない」 「そうかな。わたしも、ふーかも、瞬たんのことはよく知っているつもり。いまの瞬たんはむりしてる。あかねたんと付き合いはじめたころから、瞬たんは心の底から笑わなくなった」
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