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なぎさは終わっていないという。だが、ぼくの中ではまちがいなく終わったことである。
ぼくは彼女を愛せない。その事実だけが、いつまでもふたりのあいだに残酷な真実として浮かび上がるのだ。どれだけ自分をあざむいても、身体を重ねた瞬間に気づいてしまう。
「瞬。ほんとうに、あかねたんのことが好きなの」
およそ風花の口から出たとは思えない台詞だった。なぎさに触発されたのであろう。
「あたし、わからない。瞬はあかねたんと一緒にいて楽しいの。いっつもどこかうわのそらで、ため息ばっかり。気づいてないだろうけど」
瞬。昔のようにそう呼んでいることに、興奮した風花は気づいていない。「冷静になりたまえ」ぼくは彼女の肩にそっと手をおき、なだめるようにいった。だが、焼け石に水である。
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