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「ぼく、ちょっと、トイレ」
ぶーちゃんがそそくさと席を離れた。逃げた。気をつかったのではない。気まずさに耐えきれずに逃げたのだ。なぎさの父親はパーティーがはじまってわりと早い段階で奥に引っ込んでしまったし、頼れる人間などひとりもいない。
そもそもが特殊なのだ。ぼくたちの関係、感情が。友人という都合のいい言葉で飾ってごまかしているけれど、実際はひどく曖昧なグレーゾーンをふらふらとさまよい歩いているのである。
なぎさも、風花も、かつての恋人だ。
別れても友だちでいようね。そんな口約束同然の言葉を、彼女たちは忠実に実行していた。だが、かんたんに割り切れるような恋ならば、ひとは誰も泣いたりしない。傷つくからこそ、恋は麻薬のように感覚をしびれさせる。
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