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約束の時間は午後五時半。待ち合わせは駅北口のロータリー近辺。きらきらと水しぶきをあげる太陽のオブジェの前で、冷たい石のベンチに座ったぼくは腕を組んだり足を組みなおしたりと、所在のない時間を過ごしていた。楽しそうな恋人たちが、家路を急ぐひとの群れが、ぼくのわきを何度も何度も行き交うたびに、自分がこの世界に取り残されていくような気がする。
「瞬たーん」
五分遅れてあかねが正面からやってきた。日はすっかり暮れて、辺りはオレンジの光に優しく包まれている。
「ごめんね。ちょっと混んでて」
「いや。かまわない。逢えてうれしいよ」
「うへへ。わたしも」
小走りのせいか、あかねは息をはずませて苦しそうにいった。黒のレザージャケットに、ベージュのロングスカート。ハイヒールが妙に大人っぽい。口元を隠すように巻かれた白いマフラーのすきまから、煙のような息がたちのぼる。
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