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「どこに行こうかなあ」
楽しそうにそういいながら、あかねがぼくの手をそっとにぎった。ひんやりと冷たい感触。あかねの手はいつも冷たい。末端冷え性なのだという。ぼくは指と指をからませるようにつなぎなおし、てのひらに神経を集中させる。
「瞬たんの手はあったかいねえ」
繊細な指先がキーボードを叩くように、ぱたぱたと忙しなく動いた。あかねはうれしいときや楽しいとき、こうした反応を示す。ぼくはそんな些細なサインを見逃さないよう、つねに細心の注意を払うのだ。「きみにまかせる」
「じゃあ、イタリアンなんてどう」
ぴんとひらめいたのか、あかねの声のトーンが高くなった。ぼくの返事はといえば、もちろんイエスである。誰かになにかを決めてもらうのは楽だし、そこに責任もともなわないのだから。
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